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礼拝メッセージ

「飼い葉桶の中で」
ルカによる福音書2章1〜7節

メリークリスマスのメリーとは、陽気なとか、浮かれたという意味で、楽しいクリスマス を!ということですが、この世で最初のクリスマスは、まったくそのようなものではなく、むしろ世間の冷たさに吹かれ、身も縮むような思いをしなければならないクリスマスでした。

☆ ローマ皇帝アウグストゥスの勅令

そのころ、ユダヤを含む地中海世界はすべてローマ帝国の領土でした。その広大な地域を 支配していたのが皇帝アウグストゥスです。彼はローマ帝国の統一を果たした初代皇帝です。また周囲の国々をも制圧し戦争を終わらせ、「ローマの平和」を実現させたことにより救い主とか神の子と称賛され、皇帝礼拝も盛んに 行なわれていました。そのアウグストゥスから全領土の住民に、住民登録をせよとの勅令が出されました。皇帝の勅令は絶対命令ですから従わなければ処罰されてしまいますから、皆それぞれ戸籍のある故郷に出かけました。ヨセフも当然出発しましたが、そのとき住んでいたナザレから故郷のベツレヘムまでは約120キロの距離があり、歩いて3〜4日程かかり ます。その旅程は危険を伴うものでしたが、彼はすでに臨月になっていた、いいなずけのマリアも連れて行ったのです。なぜヨセフがそのような危険を冒したのか。それは彼らが村人たちから白眼視され、孤立していたことが推測できます。

マリアのお腹の子は聖霊によって身ごもったのですが、そんなことを村人たちには話さなかったか、話しても誰も信じはしなかったでしょう。ですから村人たちの目から見れば、マリアとヨセフは婚約中に子供を作ったけしからんカップルだとしか見られていなかったはずです。そんな愛のないところにマリアだけ置いて何日も村を空けるなどということはできなかったのでしょう。しかも、子供がいつ生まれてもおかしくない状況です。

ヨセフはマリアを一人ナザレに残すよりも一緒にベツレヘムに行く危険を選んだのです。

☆ 宿屋には泊まる場所がない

二人は何とか困難な移動を終えて、ベツレヘムにたどりつきました。しかし、ほっと一安心したのも、つかの間。新たな問題が生じました。「宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである。」
これはいったいどういうことか。 彼らが貧しかったため、彼らに払える程度の宿賃の宿が見つからなかったのか、それとも、 律法により、「出産した産婦は男児の場合33日間、女児の場合66日間、出血により汚れている」とされていたので、宿屋からは敬遠されたのか、あるいは、婚約中にマリアが妊娠したことが知れ渡り、悪いうわさが拡散していたためなのか。

とにかく、大勢の客が訪れベツレヘムの商売人にとっては書き入れ時であったこのとき、 宿屋には彼らの泊まる場所はなかったのです。

☆ 家畜小屋でお生まれになった神の御子

ベツレヘム近郊には、羊飼いたちが羊たちを休ませるための洞穴が、いくつもありました。宿屋に泊まることができなかった彼らは、やむを得ずそのような洞穴の一つに泊まることになったのです。すると間もなくマリアはそこでイエスをお産みになりました。 誰からも歓迎されない神の御子の御降誕でした。わびしい家畜小屋しか彼らの居場所はなかったのです。しかし、曲がりなりにもそのような居場所があったことによりイエス様はこの世に生まれることができました。ベツレヘムの町に住む人々の心にはイエス様を受け入れる居場所がありませんでした。しかし、後に登場する羊飼いや東方の学者たち、そしてザカリアやエリサベト、そしてヨセフとマリアの心には主イエスを受け入れる居場所がありました。信仰とはイエス様を受け入れる居場所を心の中に持つことかも知れません。